朗読音声<4分31秒>

第15章 武士道が完成させた国民道徳「大和魂」

 

 ◆ 民衆の倫理観の縦軸となった武士道

 

 武士道精神は、一般庶民の日本人の水準の、遥か上をいくものですが、

朝日が山頂を照らし、やがてその光が裾野へと広がっていく様に、

武士道精神は時を経て、

「大和魂」という全日本国民の道徳観念を

その極致にまで引き上げたのでした。

人間がその本心を抱く限り、

美徳も、悪徳に負けないくらい強い伝染力を持つものなのです。

自由主義を勝ち取ったアングロサクソンですが、

この動きの発端も、一般大衆という事は極めてまれで、

主には貴族階級、いわゆる紳士(gentleman)が導いていたものでした。

 大衆の間で語り継がれる芝居、寄席、講談、浄瑠璃、小説などは、

侍たちの話題が展開されて作られていました。

「花は桜木、人は武士」という言葉がすべてを物語っています。

農民は毎晩のように、

飽きる事無くその話題に興じて、のめり込み、

自らの心をも燃やしていたのです。

幼い子供たちには、まだ活舌の悪い頃から、

桃太郎の話を聞かされるものでした。

日本人の知性と、道徳観念は、

侍たちによってけん引されてきたのです。

 

 これらの事について、

聖書を基にこの様な反論をする人が居るかもしれません。

「人類の父母、アダムとエバが堕落した時、

 その2人を導く紳士がどこにいたのか」と。

確かに、エデンの園に居たのが紳士であれば、

2人はその紳士にただ追従するだけで、正しい道を歩めるようになります。

ですが、そうなれば、

神に反逆し、悲劇が展開されるきっかけとなったあの事件は

そもそも発生する事もなく、

ある面、人間の意思決定と関係無く自動的に平和な世界になっていた事でしょう。

 

 ともあれ、

古き良き日本の文化は、侍による武士道が醸成したものでありました。

侍たちは、

大衆の平和と安寧を願い、自らが武士道の手本として立ち、

その規律で人々を導いたのでした。

 

 

 ◆ 大和魂を具現化した「武士道」と「桜花」

 

 昨今はその多くが本来あるべき形から逸脱していますが、

「任侠」に於いて、

子分は、名誉もお金も自分自身もすべて、親分に託す伝統がある事から、

武士道精神が、日本社会の隅々にまで行き渡っていた事が伺えます。

そしてこの親分たちは、

一部、収拾のつかない侍たちの横暴に対して抑止力を持つ

正義の存在とまでなっていたのです。

 武士道は、その母体となる武家階級から、

ありとあらゆるルートを辿って形を変え、

酵母のように各所で発酵し、

日本全体の道徳律、大和魂を完成させていったのです。

必ずしもその全てが、武士道精神の極致まで達していなかったにしても、

この「大和魂」は、

日本人の代名詞とまでなったのです。

宗教でないながらも、これ程までに民族の道徳観念に影響を及ぼしたものは

世界のどこを見てもないでしょう。

 

 本居宣長は、日本人の心情を

「敷島の 大和心を 人問はば 朝日に匂ふ 山桜花」

と歌いました。

桜こそが、日本国民の民族性の象徴であったのです。

ヨーロッパで賞賛される、

美しさの中に棘が潜むバラとは違い、

桜には、繊細な美しさと強さがあります。

また、バラは、生にしがみつくかの様に、朽ちるまで枝に付いていますが、

桜は、もっと咲いて欲しいと思う、一番美しい時に潔く散り、

大きな感動を人々に与えるもので、

この点も、武士道精神と一致する所です。

 そして、強烈ではない、ほのかな桜の香りも、

日本人の国民性に同調する美しい特性と言え、

この香りにつられて人々は桜のもとに集い、そこで苦しみや悲哀を忘れ、

新たな心で再び仕事に戻るのです。

それは、

ノアが捧げた燔祭の香りを嗅いで、

その御心に新たな決意を固められた創造主の姿を思わせるものです。

 

 もし、この桜こそが

日本の武士道精神・大和魂の典型であるのならば、

桜がほんの一瞬、その香りと美しさを放って、すぐに散ってしまう様に、

日本人の魂も、脆く、滅んでしまうものなのでしょうか・・・

 

 


 

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